髪のガラス転移点
髪のガラス転移点は、大きく分類してケラチンタンパク質とCMC の2つ存在します。
髪のケラチンのガラス転移を説明しようと思っても分かりにくいので、髪を板ガムに置き換えて想像してみましょう。
固い板ガムを暖かい場所に置いておくと柔らかくなるでしょう。
その柔らかくなる温度をガラス転移温度と理解してください。
そして冷やしたら、その曲がった形でまた固くなりますね。
ガラス転移点とは、もともとはガラスに起こる現象
ガラスも熱で温度を上げると、ガラス転移点で固体から柔らかくなり始め、大きく形が変形します。
そして変形したまま冷やすと、ガラスはその形で固まります。
そこから、個体が柔らかくなって形が崩れ、冷やすと違う形で固体になり始める温度を「ガラス転移点」と呼ぶようになりました。
髪のガラス転移はタンパク変性も引き起こす
ストレートパーマも、ウールのスカートやズボンのアイロンプレスも同じ原理で、髪のケラチンタンパク質のガラス転移点(乾燥時)は110~150℃ですから、その温度で形を変えることができます。
しかし、一方で髪のケラチンタンパク質はガラスとは違い、タンパク変性も引き起こしてしまいます。
そこで、さらに低い温度で形を変えるために、「髪はウエット条件ではガラス転移点が下がる」という現象を利用します。
つまり、水を含んだ髪が柔らかくなることを利用して、たとえばクリーニング業界で用いる蒸気セットのように、ウール製品を105℃の蒸気を通して瞬間的に蒸すことで、ガラス転移点を利用して背広やズボンやスカートの折り目の形をしっかり作る方法です。
家庭では、例えばウールのズボンに水を霧吹きしてからアイロンをかけたり、蒸気がでてくるようなアイロンをかけるとプリーツ(折り目)をつけることができあます。
でも、105℃なんて普通の1気圧の状態ではできないですよね。
髪は圧力釜と似ていて、圧力釜の蓋の役割が髪のキューティクルになります。
髪は高温アイロンに触れると、髪の内部にある水分が蒸気に変わり体積が増し、一時的に圧力釜のように髪の内部圧力が高くなり、105℃から110℃ぐらいの圧縮蒸気が内部に生まれるのを利用するのですね。
スカートやズボンのプリーツ(折り目)は、
クリーニング店で、スカートやズボンのプリーツ(折り目)をつけるために圧縮蒸気でプレスすると折り目が着くのは、105℃のガラス転移温度によりウールケラチンが柔らかくなるためです。
圧縮蒸気だけでは、折り目をつけるのに時間がかかるので、さらにS-Sを還元剤で切っておくことで楽に折り目ができるわけです。
S-S結合は105℃の水がある状態で分子の運動が激しくなることで還元されるので、つなぎかえもガラス転移温度で起こり(SH/SS交換反応)、しわ伸ばしぐらいは還元剤がなくてもかたちをつくりやすいのですね。
したがって、アイロンで乾いたスカートのしわを伸ばすときに、霧吹きで水でちょっと湿らせたり、蒸気を加えるとしわを伸ばせるのもそういう理由なのです。
ガラス転移点をうまく使うと、
髪の毛の場合、乾燥やダメージで曲がったキューティクルを平らに整え、艶を増すためには、105℃のガラス転移温度を用いることで、髪を熱で痛めないようにキューティクルを整えることができます。
さらに、タンパク変性を抑えるポリアミンAEEを使えば、さらにダメージを減らしながら艶を出すことができます。
これを応用したのがヘアマゼラン技法で、リトルサイエンティスト が特許出願している技術なのです。